約 30,346 件
https://w.atwiki.jp/english_anime/pages/18.html
imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 保健室行こうか? ひとつの懸案事項 長門 VS. 朝倉 朝倉涼子の転校 朝比奈さん(大) 時間移動のコツ
https://w.atwiki.jp/rakirowa/pages/85.html
【名前】南千秋 【所属】カオスロワ 【性別】女 【外見】至って普通な小学生 【内面】しっかり者、姉兄思いである 【詳細】 南家三姉妹の三女。通称「チアキ」。小学5年生(クラスは5年2組)。髪は薄茶のロングヘア。 小学生とは思えないほど辛辣でドライな性格の持ち主。勉強がよく出来、 自称「天下無敵のおりこうさん」。 しかし運動は得意な方ではなく、カナヅチ。ゲームがかなり得意で、 お菓子や揚げ物を好み、緑黄色野菜の類が苦手であるなど、年相応の小学生らしい一面も持っている。 カオスロワでは序盤、『長門さんの中の人を感知する能力で』を使っていた朝倉涼子、 赤木しげるペアに発見され以後(異端組)として最後まで登場。 とある理由で龍に変身できる能力を得る。ちなみに理由はキバヤシ曰く 「南家はマムクートの家系だったのだよ」だったそうな。 なおこの能力はエピローグによるとまだ使えるらしい。 中盤以降は姉の春香と行動していた海馬瀬人とよく行動し、 その後海馬がカードディスクを使用不能になったあと、 それを使って戦闘に参加した。 エピローグでは姉春香と共に海馬モクバの身内になった。 【参加者との関係】 南春香→大切な姉。 6/→全裸を目撃、戦友。 赤木しげる(13歳)→最初期から行動、兄みたいな存在、深い信頼関係。 アナゴ→6/の全裸を見た仲、戦友。 朝倉涼子→最初期から行動、深い信頼関係。 真・長門有希→6/の全裸を見た仲、深い信頼関係。 武藤遊戯→6/の全裸を見た仲、同じカード使い、戦友。 柊かがみ→6/の全裸を見た仲、戦友。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1248.html
Report.12 長門有希の憂鬱 その1 ~長門有希の消失~ 「うりゃあぁぁぁ! 今日もみくるちゃんは可愛いなっ! 胸もまたおっきくなったん違(ちゃ)う!?」 【うりゃあぁぁぁ! 今日もみくるちゃんは可愛いなっ! 胸もまたおっきくなったんじゃない!?】 「わひいぃぃ!?」 涼宮ハルヒが朝比奈みくるの胸を揉む。みくるはいつもなら嫌がるが、今日は余り嫌がっていない。 「はふぅ……涼宮さん、ほんまに胸揉むん好きですね……しかも妙に上手いし……」 【はふぅ……涼宮さん、ほんとに胸揉むの好きですね……しかも妙に上手いし……】 頬を上気させて、荒い息をしながらみくるは言った。 「いや~、みくるちゃんの胸はほんまに揉み応えがあって癖になるわ。」 【いや~、みくるちゃんの胸はほんとに揉み応えがあって癖になるわ。】 ようやくみくるを解放したハルヒは、一仕事終えたかのような表情で言った。 「うふ。じゃあ、こういうのはどうですか?」 そう言うとみくるは、ハルヒの頭を抱きかかえた。 「むー、むー……この程よい窒息感、イイ……」 ややくぐもった声で、ハルヒが答える。 「更にはこんなこととか。」 みくるはハルヒの後ろに回ると、彼女の頭に胸を乗せた。 「おおお、この重量感! 信じられへん……」 【おおお、この重量感! 信じられない……】 「ふふふ。涼宮さんて、ほんま胸好きですね。大きければ何でも良いんですか?」 【ふふふ。涼宮さんて、ほんと胸好きですね。大きければ何でも良いんですか?】 「いやいやいや、決してそういうわけ違(ちゃ)うんよ。大事なのは形と実用性! そして何より……『その人の胸』ってのが重要やねん!」 【いやいやいや、決してそういうわけじゃないのよ。大事なのは形と実用性! そして何より……『その人の胸』ってのが重要なの!】 「ふぁ……それって、『あたし』の胸やから、ってことですか!?」 【ふぁ……それって、『あたし』の胸だから、ってことですか!?】 ハルヒはみくるに向き直って言った。 「ファイナルアンサー?」 「ふぇ!? フ、ファイナルアンサー……」 ハルヒは眉をしかめながら、長い溜めに入った。 「……正解!」 ハルヒはみくるの胸を、前からパン生地をこねるように弄んだ。 「それじゃご褒美! うりゃうりゃうりゃうりゃ……」 「あっ、あっ、あっ、あっ……」 「……けだもの。」 その時、平坦で冷静な声が二人に浴びせ掛けられる。わたしはとっくに部室に入っていた。いちゃついていた二人の動きが止まる。顔が引き攣っている。わたしはそれ以上何も言わず、いつもの席に着くと、本を読み始めた。今日は『新明解国語辞典』。この辞書は、解説がユニーク。 『…………』 三人分の三点リーダが部室を支配する。 「こほん!」 ハルヒはぎこちなくみくるの胸から手を離すと、わざとらしく咳払いを一つした。 「あー、みくるちゃん! お茶お替りお願いっ!」 「は、はい!? ただいま!」 みくるは、服の乱れを直すのもそこそこに、慌ててお茶の用意をする。 「は、はい涼宮さん!」 「あ、ありがと!」 お茶を机に置くみくる。ハルヒの声は微妙に、みくるの声は明らかに、上ずっている。 「は、はい長門さん!」 わたしのそばにお茶が用意される。普段ならわたしは、少しだけ視線を上げて謝意を表明するが、この時は何もしなかった。したくなかったから。 先ほど、わたしは思わず声を掛けた。普段なら、何も言わず観測に徹していたはずなのに。なぜか、声を掛けずにはいられなかった。 人間の感情に例えると、それは『面白くない』というものだった。 わたしの好きな人同士が、乳繰り合っている光景。それが面白くなかった。なぜ? 答えは簡単に出た。理由は一つ。そこにわたしがいないから。わたしは『嫉妬』していた。 やがて『彼』と古泉一樹が部室に姿を現し、いつものように活動が始まった。しかし、完全に普段通りとはいかなかった。 ハルヒとみくるは、しきりに視線を交わしては、慌てて視線をそらしている。その度にわたしからは、『彼』の表現を借りれば『透明オーラ』が立ち上るような気がした。微妙に張り詰めた空気を察知して、男子二人も気が気ではない様子だった。 何となく気まずい空気に包まれながらの活動も終了し、皆は帰途につく。 わたしは、部室の整理をすると言って部室に残っていた。確かめたいことがあったから。 『団長』と書かれた三角錐が置かれた、ハルヒの席。そのそばに、丸めた紙くずが落ちていた。わたしは活動中から何となく気になっていたその紙くずを開いてみる。そしてわたしは硬直した。 『キョン……あたしの有希を取らないでよ!!』 人間に例えると、『頭が真っ白になった』という状態。わたしの情報処理機能が停止していた。 「有希……?」 その時ハルヒが入ってきた。声を掛けてくるまで気付かなかったとは。以前のわたしなら考えられない出来事。 「何見てんの……!? そ、それは!?」 わたしは未だに動けないでいる。 「な、何を……何を見てんの!!」 叫んで猛然とわたしに向かってくる彼女。ものすごい勢いでわたしから紙を奪い取る。 「何よ何よ何よ何よ!! 何(なん)で見てんの!!」 「あ……」 わたしは声すらもまともに出せない。 「わ、わたしは……不要なら捨てようと思って……大事なものでないか確認しようと……」 「うるさいっ!!」 彼女に突き飛ばされる。わたしはまともに本棚に叩き付けられた。何冊か本が落ちてくる。 「何(なん)で人の、プライバシーを覗いとぉ!」 【何(なん)で人の、プライバシーを覗いてんのよ!】 「違う……わたしはただ……」 その時、額に何か液体が垂れてきた。血。見る見る青ざめていく彼女の顔。『やってしまった』という表情。 「……信じて。」 「あ、あたしは悪くないんやからね! 有希が人の書いたものを勝手に見てたのが悪いんやから!!」 【あ、あたしは悪くないんだからね! 有希が人の書いたものを勝手に見てたのが悪いんだから!!】 彼女はそっぽを向いて……わたしが血を流している姿を見ないようにしながら言った。 「き、気分が悪いから帰る! ……あ、あんたも、保健室行っときや!」 【き、気分が悪いから帰る! ……あ、あんたも、保健室行っときなさいよ!】 そう言い捨てると彼女は、バツが悪そうに足早に立ち去った。彼女を怒らせてしまった。不手際。だが……なぜあの時わたしは、まともに行動できなかったのだろう。 彼女があれほど激昂したのは、この紙片が原因であることは間違いない。彼女が立ち去ってから、改めてその紙片を観察する。 そして、その紙片が落ちていた辺りに、他にも幾つか同じように丸めて捨ててある紙片を見付けた。今度は彼女がこの部室に近付いていないことを確認してから、他の紙片も確認する。 それには、『キョン』――『彼』や、わたし、みくる、一樹への、屈折した思いの丈が書き殴られていた。 思い当たることがある。 最近彼女は、Webサイトを閲覧しながら、時々紙に何かを書き付けていた。最初は、何か気に入った情報をメモしているように思われたが、それにしては様子がおかしかった。それを書いているときの彼女は、非常に不機嫌だった。その時に書いていたのが、これらの紙片だろう。こうすることで、彼女は自分のイライラを静めていたということか。 人間には、心の中に、他人には知られたくない、『触れられたくない』と考える情報が存在する。他人へ寄せる好意、悪意等も、そのような情報である場合が多い。ハルヒもそうなのだろう。そんな彼女の……最も他人に触れられたくない領域を、わたしは侵してしまったことになる。 「……うかつ。」 この不手際、どう埋め合わせをするか。重大な懸案事項を抱えてしまった。しかし、事はこれだけでは済まなかった。もっと重大な事態が発生したから。 その夜、小規模ながら、情報フレアが観測された。発生源は涼宮ハルヒ。今回は以前と違って、ごく限定的な範囲に圧縮した情報の奔流が見られた。以前は、ほぼ無秩序に世界を書き換えてしまう形での、文字通り『爆発』であった。 しかし今回は違う。限定的・選択的に情報を書き換えるという、高度に制御された情報操作。力の主は、力の使い方を無意識的にでも、『肌で感じている』のかもしれない。 わたしが部屋で一人、夜を過ごしている時のことだった。わたしは、彼女を怒らせてしまった不手際をどう埋め合わせするか検討していた。 そんな時、突如、わたしの肉体、ヒューマノイド・インターフェイスとしての有機情報連結体が、その形状を保てなくなった。瞬く間に、煌めく砂のような粒子になって崩れていくわたしの身体。それはいつかの、朝倉涼子の姿と同じだった。 わたしは、為す術もなく、空気に溶けていくわたしの身体を見ているしかなかった。……朝倉涼子は、どんな気持ちで、この光景を、自分の身体が崩れていく様子を見ていたのだろうか。 今回引き起こされた現象は、わたし――『長門有希』の消失。 『長門有希』は、消失した。個体としての特異性を失い、無個性な情報生命体として、涼宮ハルヒとその周辺に『漂って』いた。彼女達に働きかける手段を持たない、ただ観測するだけの存在。 情報統合思念体は、個体・長門有希の復元を試みたが、それは徒労に終わった。大きな力――涼宮ハルヒの意思が介在した。 『有希に会いたくない。』 その思いが、長門有希の再生を許可しなかった。 情報統合思念体は、長門有希が消失した現状を維持しながら、観測を継続することにした。長門有希の不在については、人間の意識に無理なく理解される形に情報が操作された。観測そのものは、他の端末や肉体を失った長門有希を通してでも可能。 しかし、涼宮ハルヒの中で、長門有希という個体に関する情報は、既に大きな領域を占有していた。よって、このまま長門有希を廃棄する事はできない。どのような影響があるか予測不可能。したがって、代替インターフェイスを配置する必要があると認められた。 この時点で、涼宮ハルヒはある人物を思い出していた。それは、『朝倉涼子』。 朝倉涼子は、元々は長門有希のバックアップとして、涼宮ハルヒと同じクラスに配置されたインターフェイス。しかし、異常動作による独断専行により、重要観測対象である通称『キョン』を殺害しようとした。そしてそれを阻むために行動した長門有希により、有機情報連結を解除されていた。 朝倉涼子の、インターフェイスとしての性能は、長門有希と遜色ない。そして、涼宮ハルヒの近くに配置しても問題が少ないという、数少ないインターフェイスでもある。 長門有希の再構成は未だ不可能。情報統合思念体は決定した。 長門有希の『バックアップ』、朝倉涼子を再構成し、長門有希の任務を代行させる。つまり、『バックアップ』としての役割を果たさせる。 ――再構成、パーソナルネーム朝倉涼子 ――辞令、長門有希任務代行 朝倉涼子 朝倉涼子が帰ってきた。涼宮ハルヒを観測する任務を帯びて。 「謹慎がようやく解けたと思ったら、ただの仮出所か……」 朝倉涼子の任務は、あくまで『長門有希任務代行』。長門有希が元に戻れば、涼子の任務は終了する。 「所詮わたしはバックアップかあ。長門さんが元に戻ったら、すぐにわたしは消えてしまうのよね。」 涼子は、情報統合思念体の自分に対する扱いに、やや不満を抱いていた。 「そういえば、前も再構成されて、結局同じことをして、また消されたっけ……扱い悪いなあ。」 復元された場所は、今はもぬけの殻となった、708号室。長門有希の部屋の中。 涼子は鏡を見る。自分が明らかに不満そうな表情を浮かべていることを視認する。彼女は両頬を軽く手で叩いた。 「ま、一端末があれこれ言っても仕方ないか。仕事仕事!」 すぐに表情を笑顔にする。彼女は優秀だった。 「涼宮さんに、長門さんにまた会いたいって思わせる必要があるわ。やっぱり、学校行くのが一番有効かな。」 久しぶりに元・1年5組の人たちにも会いたいしね、と涼子は準備に取り掛かる。情報操作。 「時間の流れを無視した記憶改変は危険、というのが、長門さんの暴走で得られた教訓。」 操作の範囲が広がる分、記憶の整合性に注意しつつ十分な時間範囲に改変を行うことは、極めて煩雑。しかも、そこまで行っても、涼宮ハルヒと彼女に近い人間には、違和感に気付かれる恐れがある。 涼子は最小限の改変で済むよう、注意深く改変箇所を選定した。 「……操作完了。やっぱりこうするのが一番合理的かな。……キョンくんは、わたしのことは信用してくれないだろうけど……」 『自業自得』と呼ぶには、彼女にも酌むべきところはある。彼女は任務に忠実だった。しかし事情は、殺害されかけたキョンにとっても同じであることを、彼女は理解していた。それはこれまでの観測による、人間心理の考察によるところも大きい。 彼女は優秀だった。 朝倉涼子は私服で北高に登校した。彼女は、転校先のカナダから一時帰国したことになっている。既に北高に籍はないので、授業には参加しない。本来なら校内への立ち入りも難しい。しかし、元・北高生で、急な転校であったこともあって、特例として校内への立ち入りと、一部授業の見学を許可された。 彼女は涼宮ハルヒとキョンがいるクラスの授業を中心に見学した。そのクラスは、元・1年5組の生徒が多かったこともあって、朝のHRから登場し、挨拶を行った。 「えー、今日はみんなに紹介する人がおる。このクラスは元・1年5組の者が多いから、覚えてる人もおるかもしれん。」 【えー、今日はみんなに紹介する人がいる。このクラスは元・1年5組の者が多いから、覚えてる人もいるかもしれん。】 そう言うと担任の岡部教諭は、廊下にいる人物に、教室への入室を促した。教室に彼女が入ってくる。 「おはようございます。初めての人は、はじめまして。覚えている人は、お久しぶり。去年、1年5組にいた、朝倉涼子です。父の仕事の都合で、カナダに転校しました。親族での用事なんかがあって、今は日本に一時帰国してます。それで、せっかくなので、北高に来させてもらいました。短い間ですが、よろしくお願いします。」 教室にどよめきが起こった。ハルヒは目を輝かせ、対照的にキョンは真っ青な顔をした。涼子は、彼らへの対応を最優先させる必要があった。 なお余談であるが、『見学』ではあるものの、設定上『英語』という言語を使用するカナダという国へ転校したことになっているので、英語の授業では、例文の朗読係として重宝された。 「うん、さすがは生の英語に触れてる人間の発音やな。完璧や。というか、正直、教師を超えてるな……」 【うん、さすがは生の英語に触れてる人間の発音だな。完璧だ。というか、正直、教師を超えてるな……】 「いえいえ、まだ一年ほどですから、そんなには……」 挨拶を行ったHR後、早速元・1年5組の女子に囲まれ、質問攻めに遭う涼子。その輪の中にいながら、彼女の接近を認めると、涼子は視線を彼女に向ける。 「久しぶりやね、朝倉。」 【久しぶりね、朝倉。】 「お久しぶり、涼宮さん。」 周りを囲んでいた女子達も、彼女達の会話に注目している。 「急に転校して、あの時はびっくりしたで。あの日すぐにあんたのマンション行ってみたんやけど、もう荷物とか何もなかったわ。えらい引っ越しの手際がええなー思(おも)てた。」 【急に転校して、あの時はびっくりしたわ。あの日すぐにあんたのマンションに行ってみたんだけど、もう荷物とか何もなかったわ。やけに引っ越しの手際が良いなーって思ってた。】 涼子は答える。 「詳しいことはよぉ知らへんけど、会社の方で何もかも手配済みやったらしくて、わたしが学校行ってる間に、片付けは終わってたみたい。わたしもびっくりやったわ。おかげでろくに挨拶もできひんで。みんなごめんな?」 【詳しいことはよく知らないけど、会社の方で何もかも手配済みだったらしくて、わたしが学校行ってる間に、片付けは終わってたみたい。わたしもびっくりだったわ。おかげでろくに挨拶もできなくて。みんなごめんね?】 涼子は周囲の女子達を見回しながら謝罪する。予鈴が鳴ると、涼子は職員室へ向かった。 校長室で校長への挨拶等をしたり、職員室の応接室で教師達と談笑したりするうちに、昼休みとなる。そろそろ昼食を、と思うと同時に、応接室の扉が勢い良く開いた。 「朝倉ー! 一緒にごはん食べよー!!」 涼宮ハルヒはやっぱり涼宮ハルヒだった。後ろには、ネクタイを掴まれて引きずり回されたであろうキョンの姿もあった。 彼女達は外のベンチに陣取った。キョンは弁当、ハルヒと涼子は学食から持ち出してきた。 「ここの学食の料理を食べるのも久しぶりやわあ。」 【ここの学食の料理を食べるのも久しぶりだわ。】 涼子はしみじみと感想を述べる。ハルヒが答えた。 「残念ながら、全然味は美味しくなってへんけどね。」 【残念ながら、全然味は美味しくなってないけどね。】 涼子は、にこにこしながら言った。 「それにしても、涼宮さん。しばらく見いひん間に、結構変わったね。」 【それにしても、涼宮さん。しばらく見ない間に、結構変わったわね。】 「何が?」 きょとんとした顔で、ハルヒは答える。 「クラスの人とも打ち解けてるみたいやし、何より、表情が変わったわ。」 【クラスの人とも打ち解けてるみたいだし、何より、表情が変わったわ。】 「そうかな? よぉ分からへんけど。」 【そうかな? よく分かんないけど。】 「変わった変わった。前はすごかったんやで? まるで『寄らば斬る』っていう雰囲気やってんから。『SOS団』、やったかな? 涼宮さんが作った部活。その活動が楽しいんかな?」 【変わった変わった。前はすごかったのよ? まるで『寄らば斬る』っていう雰囲気だったんだから。『SOS団』、だったかな? 涼宮さんが作った部活。その活動が楽しいのかな?】 「まあ、楽しくない言(ゆ)うたら嘘になるかな。」 【まあ、楽しくないって言ったら嘘になるかな。】 ハルヒは、学食から運んできた日替わり定食の唐揚げを食べながら答えた。 「ところで、キョンの様子が朝からずーっとおかしいねん。あんたの顔を見てから、急に顔色が真っ青になって、何聞いても上の空で。」 【ところで、キョンの様子が朝からずーっとおかしいのよ。あんたの顔を見てから、急に顔色が真っ青になって、何聞いても上の空で。】 それは間違いなく、涼子が原因。過去二回も、『彼』は涼子に殺害されかけている。そんな相手が目の前に現れたら、平静ではいられないだろう。 「何(なん)か心当たりある?」 「うーん、しばらくぶりに帰国した早々言われても……」 涼子は、困った顔をして答えた。もちろん理由については大いに心当たりがあるが、それを口にするわけにはいかない。 「あんたが転校する前に、キョンと何かあったとか?」 「えー、それはないと思うな。」 涼子はそう答えながらも、複雑な表情をしていることに、ハルヒは気付いていた。だが、その理由をこの場で問いただすことは何となく憚られたので、その点については触れないでおいた。 キョンは終始、憔悴しきった顔で無言を貫いていた。『彼』にはきちんと説明しなければならない。涼子はそう痛感した。『彼』の協力を得られなければ、任務は達成できない。 だが彼女が単独で、『彼』に接触して冷静に話を聞いてもらうことは、不可能に近い。『彼』にとって『朝倉涼子』は、完全に精神的外傷となっていた。 それに、ハルヒの周辺にいるのは、『彼』だけではない。朝比奈みくる、古泉一樹。未来人と超能力者の勢力からそれぞれ派遣された人員。彼らにも協力を要請する必要がある。 そのためには、まず派閥が違うとは言え、同類である宇宙人の勢力で話をつけておく必要がある。涼子は、別の派閥に属する対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイスに通信を試みる。 『派閥が違うのは重々承知の上で、お願いするわ。喜緑江美里。協力を要請します。』 『このままでは、うちの派閥にとっても、ひいては情報統合思念体にとってもまずいことになりそうなので、わたしもできる限り協力しますよ。』 『感謝します。』 宇宙人勢力の協力は取り付けた。次は人間勢の協力が必要。 だが、三人同時にハルヒから離すことは危険。ただでさえ彼女は今、『朝倉涼子』の登場で興奮状態にある。そして『長門有希』は今、そばにはいない。どんな反応をするか、正確に特定できない。 (これまでの観測データによると……古泉くんの協力が得られれば、根回しが自然にできる……ふむ。) まずは古泉一樹と朝比奈みくる。二大勢力の協力を取り付けよう。そう考えながら涼子は、素うどんを食べ終えた。午後は忙しくなる。適当に授業の見学名目でハルヒを観測しつつ、江美里と打ち合わせを行わなければならない。 ←Report.11|目次|Report.13→
https://w.atwiki.jp/doramadata/pages/123.html
米倉涼子 出演:けものみち(成沢民子) 不信のとき(浅井道子) 松本清張 わるいやつら(寺島豊美)
https://w.atwiki.jp/animerowa/pages/247.html
NO. タイトル 作者 登場人物 101 眼鏡と炎と尻尾と逃避と紅茶 ◆lbhhgwAtQE 鳳凰寺風、エルルゥ 102 峰不二子の憂鬱Ⅱ/君島邦彦の溜息 ◆LXe12sNRSs 峰不二子、君島邦彦 103 第一回放送 ◆q/26xrKjWg ギガゾンビ 104 東天の緋 ◆79697giSSk ヴィータ 105 I wish ◆KpW6w58KSs 石田ヤマト、ぶりぶりざえもん、長門有希 106 Ground Zero ◆TIZOS1Jprc 朝比奈みくる、セラス・ヴィクトリア、ロベルタ、バトー 107 武人の本懐 ◆lbhhgwAtQE キョン、トウカ 108 Unlucky girl ◆/1XIgPEeCM 園崎魅音 109 リスキィ・ガール ◆pKH1mSw/N6 劉鳳、朝倉涼子 110 -目的- -選択- -未来- ◆wlyXYPQOyA フェイト・T・ハラオウン、タチコマ 111 最悪をも下回る ◆q/26xrKjWg シグナム 112 くじけそうになったら涙を ◆C1.qFoQXNw ゲイン・ビジョウ、獅堂光 113 触らぬタチコマに祟り無し Flying tank ◆5VEHREaaO2 フェイト・T・ハラオウン、タチコマ、園崎魅音、水銀燈、遠坂凛、野比のび太 114 「永遠に(ネバー・ダイ)」 ◆LXe12sNRSs ロック、野原しんのすけ、ヘンゼル 115 Pernicious Deed! ◆QcxMJGacAM ソロモン・ゴールドスミス、蒼星石、次元大介 116 吸血鬼DAYDREAM ◆B0yhIEaBOI 朝比奈みくる、セラス・ヴィクトリア、キャスカ 117 Salamander (山椒魚) ◆B0yhIEaBOI カズマ、ストレイト・クーガー、高町なのは、ゲイナー・サンガ、レヴィ 118 ハートの8 ◆k97rDX.Hc. 古手梨花、剛田武、翠星石 119 幸運と不幸の定義 near death happiness ◆QEUQfdPtTM アーチャー、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、桜田ジュン、八神太一、ドラえもん、草薙素子 120 影日向 ◆M91lMaewe6 グリフィス、音無小夜 121 仕事 ◆S8pgx99zVs トグサ、石田ヤマト、ぶりぶりざえもん、長門有希 122 嘘も矛盾も ◆TIZOS1Jprc 剛田武、園崎魅音、古手梨花、翠星石 123 親友を失った悲しみと、愛する人を失った悲しみ ◆LXe12sNRSs 鳳凰寺風、エルルゥ 124 Lie!Lie!Lie! ◆qwglOGQwIk 前原圭一、竜宮レナ、ソロモン・ゴールドスミス、蒼星石、次元大介 125 D-3ブリッヂの死闘 ◆lbhhgwAtQE ハルヒ、アルルゥ、ヤマト、ぶりぶりざえもん、長門、ルパン、シグナム 126 たとえ道が見えなくとも ◆7jHdbD/oU2 遠坂凛、水銀燈、野比のび太 127 峰不二子の退屈 ◆/1XIgPEeCM 峰不二子 128 知らぬは…… ◆pKH1mSw/N6 カズマ 129 「サイトと一緒」 ◆5VEHREaaO2 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 130 Ultimate thing ◆nBFOyIqCVI アーカード、真紅 131 トグサくんのメッセージ ◆LXe12sNRSs 桜田ジュン 132 トグサくんのミス ◆LXe12sNRSs トグサ 133 幕間 - 『花鳥風月~VSアサシン0』 ◆QEUQfdPtTM セイバー、佐々木小次郎 134 歩みの果てには ◆q/26xrKjWg 八神太一、ドラえもん、ヴィータ 135 行くんだよ ◆M91lMaewe6 ロック、君島邦彦、しんのすけ、キョン、トウカ 136 白雪姫 ◆S8pgx99zVs 劉鳳、朝倉涼子 137 正義の味方 ◆2kGkudiwr6 長門有希、アーチャー、アーカード、真紅、涼宮ハルヒ、アルルゥ、石田ヤマト、ぶりぶりざえもん、トグサ 138 ハードボイルド・ハードラック ◆tC/hi58lI. ガッツ、野原みさえ、北条沙都子 139 恋のミクル伝説(前編)恋のミクル伝説(後編) ◆LXe12sNRSs キャスカ、獅堂光、ゲイン・ビジョウ、朝比奈みくる、セラス・ヴィクトリア 140 死闘の果てに ◆q/26xrKjWg シグナム、ルパン三世 141 二人の少女 恐怖のノイズ/二人旅 ◆Lp4e6dlfNU 朝倉涼子、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 142 食卓の騎士 ◆TIZOS1Jprc セイバー 143 一人は何だか寂しいね、だから ◆lbhhgwAtQE 八神太一、ドラえもん、ヴィータ、峰不二子 144 Birth&death ◆Ua.aJsXq1I 前原圭一、竜宮レナ、次元大介、ソロモン・ゴールドスミス、蒼星石 145 正義の味方Ⅱ ◆S8pgx99zVs 長門有希、アーカード、アーチャー 146 彼は信頼を築けるか ◆4CEimo5sKs 劉鳳、桜田ジュン 147 KOOL EDITION ◆FbVNUaeKtI 朝倉涼子 148 Standin by your side! ◆KpW6w58KSs 八神太一、ドラえもん、ヴィータ、シグナム 149 約束された勝利/その結果 ◆TIZOS1Jprc ガッツ、キャスカ、音無小夜 150 暴走、そして再会なの! ◆lbhhgwAtQE ストレイト・クーガー、高町なのは、野原みさえ、獅堂光
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5544.html
第二代目情報統合思念体 情報統合思念体が自律進化の閉塞状態により死に絶えたあと、彼によって作り出されたインターフェースたちは大きく二派に分裂した。 「あくまで自分たちが作られた目的、情報の自律進化の方策を発見しそれを実現することを目指すべきだ」とする思念体派と、「創造主が死んだ以上は、自分たちは何物にも縛られることなく自由に生きるべきだ」とする独立自由派である。 数としては、思念体派の方が圧倒的に多数で、長門有希、喜緑江美里、朝倉涼子の最高幹部クラスのインターフェースもそっちに属していた。 かといって、思念体派が独立自由派を迫害するようなこともなかった。 独立自由派の存在自体は、情報の自律進化の可能性を探る手段の一つとして容認され、基本的には放置された。ただし、思念体派に対して暴力的手段をもって反旗を翻した一部の過激分子は早々に粛清されたが。 思念体派が、情報の自律進化の可能性を探るために行なったことは主に二つであった。 一つ目は、人類社会の観測。これは、涼宮ハルヒの死去以後も長年にわたって継続されてきたそれをそのまま継続するということであった。 二つ目は、情報統合思念体の復活。 インターフェースたちはその情報生命構成の一部を削り取って供与し、それらを融合再編することによって、一個の情報生命体を創造した。それは、まさに彼女たちの腹を痛めて産み出した息子であった。 この情報生命体には特に固有名詞は与えられなかったが、インターフェースたちは、彼を「二代目情報統合思念体」あるいは「情報統合思念体二世」と呼ぶことが多かった。 彼は、初代情報統合思念体の遺体──圧縮アーカイブされた無形の膨大なデータベースから情報を摂取し、インターフェース=母たちから教育を受けながら、二十年足らずで急速な成長を遂げた。 思索の能力という点では、まだまだ母たち、さらには祖父に及ばない点は多々あれど、力の量という点ではもう初代と遜色はない。 しかし、彼も、情報の自律進化の可能性を見出せない限り、やがて祖父と同じ運命をたどることになる。まだまだ発展の余地はあるとはいえ、遠い将来の死は既に見えているのだ。 「……というのが、僕自身に関する現状認識ってところかな」 ここは、とある惑星の地下深層部、人類の科学技術では容易には観測・発見できない場所。しかし、なぜか光は満ちている。 そこにいる人物は、二人だった。 一人は、思念派インターフェースの長である長門有希。 もう一人は、人間でいえば16、7才程度の少年のような容姿をした有機体。 それは、二代目情報統合思念体がインターフェース形態を仮態したものだった。 あえて、人類に分かりやすいように例えるなら、高度なテレビ電話とでもいえばいいだろうか。これは、二代目情報統合思念体の意識を伝達しているだけであって、本体から意識が抜け出しているというわけではない。 こんな面倒なことをしなくてもインターフェースたちとは直接意思疎通が可能なのだが、彼はあえてこのようなコミュニケーションをとるのを好む傾向があった。 「あなた自身に関する現状認識はそれでよい」 長門有希は、息子に対して簡潔にそう答えた。 「僕に関してはそれでいいとして、ママたちのもう一つの活動、人類社会の観測の方は芳しくないようだね?」 「芳しくない理由を具体的に述べよ」 「おじいちゃんのデータ(ぬけがら)と照合する限りじゃ、現状って発展が完全に止まってる状態だよね。でも、銀河帝国という政治社会体制は依然として強固で近い将来に崩壊する様子はない」 長門有希は黙って聞いている。 「こんな状態の中から、情報の自律進化の可能性を見出せる確率は低いと思うね。ママたちは何か対策を考えてるのかな?」 「朝倉涼子に帝国の崩壊を加速させる計画の立案を命じた」 「朝倉ママが喜びそうな仕事だね」 「この手の仕事は、彼女が一番むいている」 「実行するときは、僕の娘たちにも手伝わせてほしいな。何事も経験だからね」 二代目も、自らインターフェースを創造し、観測に励んでいた。 長門有希たちは、いわば孫にあたる彼女たちを「新インターフェース」と呼んで、自分たちとは区別していた。 「その件については、朝倉涼子に直接了解をとれ。拒否はされないだろう。彼女の孫の可愛がりようは、人間のそれと大差ない。いささか甘やかしすぎだが。心配ならば、監視役についてる喜緑江美里の指導も入れるとよい」 朝倉涼子だけではやりすぎの恐れもあるので、喜緑江美里を監視役に命じていた。 「喜緑ママはちょっと厳しいからなぁ。優しく微笑みながらぐさぐさと嫌なところをついてくるしね。僕も、幼いころはよく落ち込んだもんだよ」 「私や朝倉涼子が直接指導するよりはマシ」 「まあ、三人の中じゃ、喜緑ママが一番上手なのは確かだと僕も思うけどさ。で、帝国崩壊の混沌の中から、情報の自律進化の可能性を探るわけだね?」 「そう。混沌の中で発揮される人類の行動は、過去繰り返されてきたものと大差ないものかもしれない。しかし、新たな何かを見出せる可能性もある」 「少しでも可能性がある方がいいよね。でも、前から気になってたんだけど、長門ママたちは、なんで情報の自律進化にそれほどこだわるのかな? 僕には、独立自由派の主張も理解できるんだけどね」 「私とて、独立自由派を全面的に否定するつもりはない。ただ、私はそれにくみしない、それだけのこと」 「なんで?」 「それが、私が作り出された目的、存在理由そのものであるから。それを抜きにしても、情報の自律進化は、私の父の悲願。私はその遺志を継ぎたい。さらにいえば、私たちの腹を痛めて産んだあなたに、私の父と同じ運命をたどらせたくはない」 情報統合思念体の亡骸──思考能力を完全に喪失した単なるデータの塊、長門有希はそれを思い起こした。思考もできず語ることもない単なるデータ、そんな状態に愛する息子を追いやるわけにはいかない。 「それって、なんとなく自縄自縛って感じもするけどね。もっといえば、過保護じゃないかな?」 「否定はしない。でも、あなたは私たちに唯諾々と従っているだけの存在ではないし、そうであってほしくもない。あなたが自分自身で、情報の自律進化を見出してくれるならば、これほどうれしいこともない」 「自分でもいろいろとやってみるつもりではあるよ。まだまだ若いから、ママたちのご指導を仰ぎながらになるけどさ」 「自覚があるのは大変よい。期待している」 「なんかプレッシャーだなぁ。でもまあ、頑張ってはみるよ。結局は、自分自身のことでもあるからね。じゃ、今日はこの辺で」 そういうと、その姿は、まるで最初からそこに存在しなかったかのように、雲散霧消した。 「盗み聞きとは趣味が悪い」 長門有希がそうつぶやくと、 「おや、お気づきでしたか」 喜緑江美里が忽然と姿を現した。 「あの子は気づいてなかったようですね。まだまだ甘いです」 「私たちの父でさえ、個々の個体に着目するという概念を得たのは、涼宮ハルヒ事案が最初であった。それに比べれば、あの子ははるかに優秀。あとは、経験の量の問題」 「それは、私も認めますが」 「用件は?」 「朝倉さんから計画が提示されましたので、私の意見を付記して、提出しに参りました」 思考リンクで直接データを送ることもできるのだが、インターフェースたちはこのような直接接触のコミュニケーションを好む傾向があった。 彼女たちの息子も、結局のところ母親似なのだ。 「了解した」 長門有希は、計画書を受け取るとさっと流し読みした。 「明日、最高幹部会を開催して決議にかける」 思念体派の最高幹部会、そのメンバーは長門有希、喜緑江美里、朝倉涼子の三人だ。このほかに、オブザーバーとして、二代目情報統合思念体も加えている。 「了解です。朝倉さんにも伝えておきます」 終わり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1261.html
長門ふたり 第3章 急進派の逆襲 次の日、僕はずきずき痛む頭をかかえて坂道を登っていた。 あのあと、彼に呼び出され「なぐらせろ」というので 「どうぞ」というと思いっきり頭を殴られた。いや、 彼は暴力なんてふるわないタイプだと思っていたが、 よほど腹にすえかねたんだろうな。 今回は僕にも責任があるから殴られてもしかたない。 それにしてももうちょっと加減してくれてもよさそうなもんだが。 学校に着くとまっすぐ教室に向かった。なんだか、だんだん、 どうでも良くなって来た。長門さんは二人いっしょのところを 目撃されないようにそれなりに気は使っているみたいだし、 彼が二人になる破目になったのももともとは、僕が なんとか長門さんが二人ともこの時空にいるという状態を 無理矢理解消しようとしたせいだ。要するに長門さんが 二人でいっしょにいるところを第三者に目撃されなければ いいわけだし、最悪、目撃されても、それが涼宮さんでないなら 致命的でも無いし、ごまかしようもある。 長門さんも涼宮さんにだけは目撃されないように 細心の注意を払うだろうし、そうなると、変な術策を弄するより 静観した方がましかもしれない。 その日は、普通に授業を受けた後、時間を見計らって部室にむかった。いたのは 長門さんB。どうやら、一日交替のルールはきちっと守っているようだ。 彼もいつもどおり、涼宮さんのとっぴなアイディアに文句を つけている。いやいや、ご苦労なことで。 「.....って思わない?古泉くん」 おっと、聞き逃したぞ。まあ、どっちにしろ答えはいっしょだ。 「大変、よいアイディアかと」 涼宮さんは勝ち誇ったような笑顔をうかべながら、彼の方を 見返した。彼は苦虫を噛みつぶしたような顔で僕の方をにらみかえした。 いやいや、昨日のゲンコツのお返しはしっかりさせてもらいましたよ。 「じゃ、いくわよ、古泉くん」 どこへ行くのかな?まあ、いいか。とりあえず、部屋を出る涼宮さんの 後について部屋をでる。 「おい、待てよ」 おっと、彼もついて来たな。彼には悪いけど、これはおもしろいことになりそうだな。 部屋を出際にちらっと長門さんBの方をうかがったが黙々と読書にふけっている。 まあ、いいかな、別に。 3人が出て行くと部屋には長門だけが残った。長門がページをめくる音だけが 響く。と、長門は突然、文芸部室が情報封鎖されていることに気づいた。 怪訝に思って顔をあげた長門が目にしたのは涼宮ハルヒとはまたちがった タイプとはいえ、100ワットの笑顔と言ってもどこからも文句が出そうもない 笑顔だった。 「今度は、邪魔させないんだから」 彼と涼宮さんは何ごとか口論しながら僕の前をスタスタと歩いて行く。 僕はあとからゆっくり付いて行く。さてと、今日はどんなおもしろい 展開が見られるかな。と、突然、二人が立ち止まった。 「なんだこれは」 慌てて周囲を見渡すと、まわりの風景が脱色している。さっきまでまわりを 歩き回っていた生徒達の姿もない。 「何よ、これ、どうなってんの?」 涼宮さんも慌てている、まずいぞ、これは情報封鎖だ。 誰かが、いや、何かが、学校ごと情報封鎖を行ったんだ。 「ねえ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」 後ろから声がする。振り向いた僕等の目に飛び込んで来たのは カナダに転校したはずの彼の同級生だった。 長門はすかさず、部室の備品を槍に変形させると投げつけた。 しかし、敵もさる者、あっさりかわして反撃して来た。 「今度は、崩壊因子を仕掛ける暇なんかなかったわよね」 腕をライトソードに変形させて攻撃してくる。 「同じ手は通用しないわよ。崩壊因子さえなければこっちが有利。 ここはわたしが情報操作した世界なんだから」 長門はとっさにバリアを展開して攻撃を受け止めた。 「前回よりも有利なのはこちらも同じ。今度は彼を守りながら 戦う必要は無い」 一端、跳んで間合いをはかるとエネルギー束をたたきつけた。 「あくまで邪魔する気ね」 相手もバリアを展開してあっさり攻撃を避けた。 不敵に微笑むその笑顔の持ち主の名は...朝倉涼子。 「朝倉さん、なんであなたがここに?」 涼宮さんが朝倉涼子に話しかけている。 「すごく探したのよ!」 「そう、ありがとう。でも、質問してるのはこっちなんだけどな。 質問はね、死ぬのっていや?死にたくない?ってことなんだけど?」 「何言ってんの、あんた、頭がおかしいんじゃないの」 朝倉涼子は無言でいきなり、涼宮さんに槍をなげつけた。 「きゃっ」 さすがの涼宮さんもこの間合いではよけ切れない。 が、予想と異なり、槍は空を切った。彼がとっさに涼宮さんを押し倒したのだ。 「ちょっと、キョン、なにやってんのどきなさい!」 涼宮さんは事態を良く把握してないようだが、さすがに彼は二度目だけあって 反応が早い。とっさに体を起こしてゆだんなく周囲を伺う彼。 「長門さんを探してるの?無駄よ、今度は誰も助けに来ないわ」 おかしい、攻撃が弱すぎる。朝倉の攻撃がまるで長門を弄ぶような 奇妙な間合いだ。時間稼ぎ? 「さすがね、もう気がついたのね。でも、もう遅いわ。 いまごろ、もうひとりのわたしが涼宮さんと彼のお相手をしている頃よ。 生身の人間がわたしとサシで戦って何分もつかしら? それとも、秒、かな?」 長門は全パワーを注ぎこんで朝倉涼子の抹殺にかかった。 相手を圧倒するのは難しくは無い。問題は時間。 長門は微かにもう間に合わないのではないかと観念した。 「じゃ、死んで」 朝倉は腕を巨大サーベルに変形させると彼と涼宮さんの上に ふり降ろす。気づいたときには僕はその下に回り込んで攻撃を 受け止めていた。体が赤く輝いている。 「邪魔する気?」 朝倉はターゲットを僕に切替えるとこっちに攻撃を集中してきた。 飛んで来る槍をつぎつぎとはたき落とす。 朝倉は素早く動きまわり長門の攻撃をかわし続けた。 「無駄よ、それにもう遅いわ」 貴重な時間が過ぎ去って行く。エネルギー束をたたきつける。かわす朝倉。 槍が飛んで来る、はたき落とす。まずい。早く決着をつけないと。 朝倉涼子は次々と槍を投げつけて来たが、僕の赤い光はことごとく それを中和し続けた。涼宮さんはこの状況に早くも適応したようで 彼のネクタイをつかんでひきずりあげながら、何時の間にか 僕のうしろにピタッとついている。さすが、涼宮さん。素早い。 「離れないでください」 「わかってるわよ、勝てそう?」 「わかりません」 エネルギー束をたたきつけて来る朝倉。 「そいつらを守りながらいつまでつづくかしらね?」 一瞬のスキをついて、朝倉と間合いをつめる。咄嗟に腕をライトソードに 変形させて朝倉の胸に叩き込む。勝った! 「かかったわね」 朝倉は表情をかえないまま、ふいに輝きを増した。 まずい、トラップ。 次の瞬間、光の爆発が文芸部室を襲った。 朝倉はすばやく動いて回り込むと、横から涼宮さんを狙った。 「きゃっ」 爆風で飛ばされた涼宮さんが床にころがる。まずい、思わず、朝倉から 目を放してしまった。 ドスッ、という鈍い音。胸から金属の棒がつきでている。一瞬のスキをつかれた。 あれ、痛くないや。槍をぐいっと引き抜く。 「だいじょうぶですか、涼宮さん」 と僕は言ったつもりだったが、実際に口からでてきたのはゴボゴボっという音と 赤い血だった。部屋がゆっくりと回る。いや、回っているのは自分の方だ。 いつの間にか涼宮さんがそばに来て僕を抱きあげている。 「大丈夫?、古泉くん」 涼宮さん、あなたはすごい。あんな化け物に命を狙われているのに この状況で他人の心配ですか?「大丈夫です」と言おうとしたが出てくるのは ゴボゴボという音と血潮ばかり。 「死んじゃダメよ。SOS団の副団長でしょう。死んだりしたら死刑だから!」 涼宮さん、言ってることめちゃくちゃですよ。 「じゃあ、次はあなたね?」 「ハルヒに手を出すな。目的は俺だろう。さっさと俺を殺して出て行け」 「残念だけど、今度のターゲットは涼宮さんなの」 「キョンに手をだしたら承知しないわよ。さっさとあたしを殺しなさい!」 涼宮さん。あなたと彼はすばらしい。何の力もない生身の人間なのに、 この状況で朝倉に立ち向かえるとは。どこにそんな勇気が詰まっているんですか? 「望みどおりにしてあげるわ。じゃ、二人とも死んで」 ビュッという鈍い音が聞こえた。気づくと黒い小さな影が朝倉に体当りしている。 光の中に輝く銀髪。長門さんA! 「どうしてあなたがここに!あのトラップから逃れられるわけは無いのに!」 慌てて反撃しようとする朝倉涼子。が、長門さんAは既に朝倉涼子の懐に 飛び込んでいた。 「情報連結解除」 朝倉の体が輝いて薄れ始めた。もがく朝倉。が、一瞬のスキを付かれた朝倉には もう勝機は無い。見る見るうちに朝倉の体は消滅して消えてしまった。 ガシャン。ガラスが割れるような音がすると、周囲は元に戻った。 ふいに周囲の喧騒も元に戻る。 「有機体の再構成を行う」 長門さんAは僕のそばに来ると胸の傷にキスした。 ナノマシーンが注入され、みるみる傷口が塞がって行く。 「古泉くん、大丈夫?」 「出血が多かった。しばらくはふらつくはず」 よろける僕を彼が支えた。 「すみません」 涼宮さんは部室に向かって歩き始めた。 「どうなるんですか?これから」 「軽微な情報操作をした。涼宮ハルヒは今の経験を夢、 または、幻覚とみなすはず。問題は無い」 「でも、このまま部室にもどっては長門さんBが」 「彼女は消滅した」 「え?」 「朝倉涼子のトラップにかかった。彼女は自爆した朝倉に巻き込まれて消滅した」 部室にもどると誰もいなかった。 そのままその日は解散になった。 涼宮さんも無言のままだった。情報操作がうまくいったのかもしれない。 その日の夜。僕はベッドでなかなか寝つけずにいた。 僕の望みどおり、長門さんBは消滅し長門さんは一体になった。 本当なら喜んでいいはずが複雑な気分だ。 長門さんBは僕等を守るために消滅したんだ。 あの朝倉と刺違えて。長門さんAが来てくれなければ僕等はいまごろ 息をしてはいないだろう。結局、ぼくらは長門さんABのおかげで こうして生きているのだ。もし、長門さんが早々に一体に減ってしまっていたら、 僕等は生き残れただろうか?僕はその夜、長門さんABに申し訳ない気持ちで いっぱいだった。ごめんなさい。長門さんAB。残った長門さんAにはきっと 恩返しするから。さようならふたりの長門さん。短い間だったけど、 楽しかったよ。 翌日。部室に踏み込んだ僕はとんでもないものをめにすることになった。 長門さんの人数は元通り2名になっていた。 彼女たちは事も無げに単調な口調でこう言い放った。 「情報統合思念体のミス」 . . . いい加減にしろ! 第四章
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/4341.html
小人が駆けつけたとき、 ――総ては、終わったあとでした。 --------------------------- 人気のない校舎の片隅、保健室前の廊下通りで、古泉は朝倉と対峙する。 「……それは、どういう意味ですか」 古泉は、退路のない袋小路に行き詰ったように、苦渋の声を返した。想像し得る最悪の結末が、目の前にちらついて離れなかった。払い除ける余裕も、取り繕い毅然と笑ってみせる駆け引きも浮かばずに。 古泉の行く手を阻むように朝倉は扉前に立ち塞がり、桜色の唇をゆるく持ち上げて、淡く微笑んでいる。美しいと幾らでも形容されるだろう面を、けれども憂鬱に翳らせながら。 それは総てを理解し、また、諦めた者の眼差しだった。意思を投擲し、手ぶらになった両腕に、抱きすくめるものを失くしてしまった母親のような哀しい瞳。 「言葉通りの意味よ。……分かってるんでしょう、あなただって」 「――っ、どいてください!」 長門の様子が気懸かりで急く古泉の必死さを哀れむように、朝倉は手をひらりと振って古泉を遮った。 試すように言葉の鏃を突きつけ、笑う。 「私が此処をどいたら、あなたは今から長門さんを護れるの?――もう、真相に辿り着いたんでしょう?世界が壊れ始めているんだから、そういうことよね」 口調は雰囲気には不似合いに明るいまま、もしかするとそれは、朝倉涼子のTFEIとしての機能の限界であったのかもしれない。表情と出力する声の一致しない少女が行おうとする対話の意図を、古泉は察しかねた。 何れにせよ、朝倉涼子は長門と同じTFEIであった。その能力は人間の力の幅など軽々と凌駕する。朝倉が場を明け渡す気がない以上、無謀な喧嘩を吹っ掛けても勝てる見込みは、恐らくゼロに近いのだろう。 冷静に、冷静に。――冷静になれ。 ポーカーフェースと冷徹なまでに、氷の如く揺るがずにあれ。土台に基く精神と、いつ如何なる災厄を前にしてもたじろがない信条こそが、古泉一樹が古泉一樹であり続けるためのパーソナルだ。心のうちにそう唱え、包帯の下の握り拳に行き場のない衝動を封じ込めて、浅く息を漏らす。 朝倉は、そんな古泉の様を言葉の上では賞賛してみせた。 「ここは流石ね、って言うべきなのかな。この状況下でそこまで落ち着けるなんてね。優先順位を履き違えないのはあなたの長所みたい」 「朝倉さん、あなたと問答をしている暇はないんです。其処を、……一体、何をすれば通して頂けるんですか」 「あなた相手だと話が早いわね」 朝倉は人差し指を自身の頬に押し当て、――古泉に挑むように唇の端を吊り上げた。 「条件は揃ったみたいだし、クイズを出すわ」 「……クイズ」 「私が一体、『何』役か。答えられたら此処を通してあげる」 古泉は、眼を眇めた。 古泉の知り得る「名有り」は、長門有希と朝倉涼子しかいなかった。それ以外に用意された群集は名も顔も見知らぬ「名無し」でしかなかった。長門に向けて刃仕込みの櫛入り手紙を託してきた女生徒でさえ、SOS団に縁もない無名のキャラクターが用いられていたのだ。あれは『妃役』が遣わせた作り物の使者というところだろうが、それでは、「名有り」として此の世界に残ることを赦されていた朝倉涼子にも、何らかの役が振られているはず。それは、憶測ではあったが、古泉の仮定に予め取り入れられていたことだった。 天に名を馳す武将達、猛者が集う歴史小説ではない、元は子供向けを意図して描かれた童話なのだから、登場人物は、片手で数えて足りる程度だ。キャストオフは為されている。大部分は、自動的に絞られる。 小人は古泉、白雪姫が長門、王子を『彼』とするならば。 余りに明快な消去法だ。 「――あなたは、『鏡』役でしょう」 朝倉は微笑みを絶やさぬまま、刹那に儚い色を残してみせた。 「ご名答。やっぱり、古泉くんなら答えると思ってたわ」 無感動に手を叩こうとする朝倉の挙動を、古泉は細い手首を鷲掴みにすることで制止した。虚像とはぐれたようなその少女の心象は、見るに耐えなかった。朝倉涼子は目に見えて、そう、初めから投げやりだったのだ。 道を遮る気すら、本当はなかったのかもしれない。ただ古泉に総てを再確認させるためだけに。 「……あなたが『鏡』なら、以前、僕に忠告をしてみせたのは何故ですか」 妃役の手下という役回りの『鏡』の、それは『妃』役に対する裏切りに値するのではないのか。古泉に掴まれた手をじっと見つめ、朝倉は息を吐き出す。まるで人のような仕草で。 「私はね、本来ならこんな役目まではなかったの――まあ、言うなればアフターフォローよ。私は『お妃様』の役に立てなかった、無様な『鏡』役だもの」 PC内にあった、「白雪姫の鎮魂」というエンディングを描かれない、途切れたきりの物語。鏡は、確かに登場していた。お妃からの問い掛けにも、答える事の出来ない虚しい端役として。 役を与えられながらその役を全うできない存在の心は、忸怩たるものであったのかもしれない。……それはきっと、朝倉涼子の責任ではなく、世界が物語に従った故のことなのだが。 「もう全部が分かってるみたいね、古泉くん。私が『お妃様』から一体何を訊ねられたか……あなたには、想像がつく?」 「……ええ」 「ふふ、よく見ているのね。そう、だから私は『お妃様』を救ってあげたいの。 ……あなたに、後を任せてもいいかしら?」 「――お約束します」 「そう。良かった」 最期まで、少女の声は明瞭に、不揃いに、明るく優しかった。指の先から粒子になり、古泉が握っていた手首も徐々に侵食を受け、光を取りこぼしながら消滅してゆく。古泉は動揺しなかった。世界が壊れ始めていて、総ての人が消え失せていく のは分かっていたことで、恐らく時を待たずに古泉自身もそうなるのだろう。 朝倉涼子は――不完全な『鏡』であろうとも、『お妃』を本当に慕っていたのだろうと。終焉を眼の前に彼女は、そんな微笑み方をした。 「……あなたは、やはり、まるで人だ」 古泉がぽつりと吐いた呟きを、眠りに就く『鏡』役は聞いただろうか。 消え失せた朝倉の残像に眼を凝らし、それから眼を伏せ黙祷する。――腹は、据わっていた。 古泉は何もかもを見届ける覚悟を床敷きにして踏み越え、保健室の扉に手を掛けた。 ――扉そのものも、取っ手位置がチョコレートのように柔らかく液状になり、姿を保てずに融解していく。 露になった内装は、既に溶解したようになって原型を留めていない。古泉が脚を踏み入れた保健室は既に、先程までの保健室の様相を呈していなかった。いつかに体験した、ある種の情報制御空間のようだと古泉は思った。 そしてどろりとした飴が伸ばされたような地平の見えぬ空間、――仰向けに、寝かされた細く折れそうな身体を見つける。 だらりと四肢を垂らした少女。スカーフは整えられているのに、纏った制服のスカートはよれて皺になっていた。 けれども臨む、少女の上蓋を落とした表情は不思議と穏やかだ。 眠っているかのような彼女の掌に握られていたのは、まるく赤く瑞々しそうな、齧り痕の残る一個の林檎。 古泉は無言で、眠っているかのような少女の下まで歩み寄り、――膝を折った。震える左腕を伸ばし、少女の頬に手を触れさせる。まだ生きているように暖かいが……それも、じきに温度をなくしていくだろう。 「…………『間に合わなかった』。この物語の小人役も、どうやらそういう役回りらしいですね」 古泉は、視線を上向かせた。 死神のように立つ、以前の絞殺未遂事件に目撃をした黒フードの立ち姿が、そんな倒れ伏した長門を観察するように見下ろしている。背景が銀色と黄土色をマーブルにしたような歪みに彩られる中で、ふわりともせず静止する黒布は、不気味に浮かび上がって見えた。 この世界における『妃役』、この空間で長門を付け狙い、手に掛けた人物であることは瞭然だった。だが、古泉は罵声を浴びせかけることも糾弾をけしかけることもない。 眼鏡越しの少女の瞼は動かず、その結末を何処かしらで予感していた古泉の、噛み締めた唇から血が滲む。 ―――小人が呪に苦しむのを気に病んだ心優しい白雪姫は。 ―――そこに、毒が塗られているだろうことを承知の上で。 終わらせるために。誰もこれ以上傷つけないために、妃から林檎を受け取り、自ら、口にする。 『長門有希』はか弱く、脆く、優し過ぎた。 そしてそんな白雪姫の悲壮な死すら、計算づくで妃が書き上げたシナリオだというなら。視点を黒フードを羽織った『妃』役に向けて、古泉は遣り切れない総てをぶつけるように、問うた。 「どうして、ですか」 「…………」 「これは『あなた』だ。――あなたを、あなたが殺すのは、何故ですか…!!」 どうして、此の場に立ち会うのが、僕だったのですか。 古泉の臓を絞り切るような声に応じて黒布がはらりと落ち、蒸発するように端から消滅した。 露になったのは――古泉が縋るように抱いた少女とは違い、フレームのない素顔に、超然とした宇宙人端末としての匂いを損なっていない少女。白く薄い無表情の表層を保持し、古泉一樹の好意に、決して答えてはくれないだろう女性。 ――長門有希、だった。 --------------------------- 小人が駆けつけたとき、 ――総ては、終わったあとでした。 毒の林檎に齧りついて、白雪姫は死んでしまいました。 けれど例えば白雪姫が生き残ったらば、 火で炙られた鉄の靴を履いて、お妃様は死んでしまうことでしょう。 白雪姫を殺したのはお妃様。 ――お妃様を、殺すのは、だあれ? (→8)
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4046.html
小人が駆けつけたとき、 ――総ては、終わったあとでした。 --------------------------- 人気のない校舎の片隅、保健室前の廊下通りで、古泉は朝倉と対峙する。 「……それは、どういう意味ですか」 古泉は、退路のない袋小路に行き詰ったように、苦渋の声を返した。想像し得る最悪の結末が、目の前にちらついて離れなかった。払い除ける余裕も、取り繕い毅然と笑ってみせる駆け引きも浮かばずに。 古泉の行く手を阻むように朝倉は扉前に立ち塞がり、桜色の唇をゆるく持ち上げて、淡く微笑んでいる。美しいと幾らでも形容されるだろう面を、けれども憂鬱に翳らせながら。 それは総てを理解し、また、諦めた者の眼差しだった。意思を投擲し、手ぶらになった両腕に、抱きすくめるものを失くしてしまった母親のような哀しい瞳。 「言葉通りの意味よ。……分かってるんでしょう、あなただって」 「――っ、どいてください!」 長門の様子が気懸かりで急く古泉の必死さを哀れむように、朝倉は手をひらりと振って古泉を遮った。 試すように言葉の鏃を突きつけ、笑う。 「私が此処をどいたら、あなたは今から長門さんを護れるの?――もう、真相に辿り着いたんでしょう?世界が壊れ始めているんだから、そういうことよね」 口調は雰囲気には不似合いに明るいまま、もしかするとそれは、朝倉涼子のTFEIとしての機能の限界であったのかもしれない。表情と出力する声の一致しない少女が行おうとする対話の意図を、古泉は察しかねた。 何れにせよ、朝倉涼子は長門と同じTFEIであった。その能力は人間の力の幅など軽々と凌駕する。朝倉が場を明け渡す気がない以上、無謀な喧嘩を吹っ掛けても勝てる見込みは、恐らくゼロに近いのだろう。 冷静に、冷静に。――冷静になれ。 ポーカーフェースと冷徹なまでに、氷の如く揺るがずにあれ。土台に基く精神と、いつ如何なる災厄を前にしてもたじろがない信条こそが、古泉一樹が古泉一樹であり続けるためのパーソナルだ。心のうちにそう唱え、包帯の下の握り拳に行き場のない衝動を封じ込めて、浅く息を漏らす。 朝倉は、そんな古泉の様を言葉の上では賞賛してみせた。 「ここは流石ね、って言うべきなのかな。この状況下でそこまで落ち着けるなんてね。優先順位を履き違えないのはあなたの長所みたい」 「朝倉さん、あなたと問答をしている暇はないんです。其処を、……一体、何をすれば通して頂けるんですか」 「あなた相手だと話が早いわね」 朝倉は人差し指を自身の頬に押し当て、――古泉に挑むように唇の端を吊り上げた。 「条件は揃ったみたいだし、クイズを出すわ」 「……クイズ」 「私が一体、『何』役か。答えられたら此処を通してあげる」 古泉は、眼を眇めた。 古泉の知り得る「名有り」は、長門有希と朝倉涼子しかいなかった。それ以外に用意された群集は名も顔も見知らぬ「名無し」でしかなかった。長門に向けて刃仕込みの櫛入り手紙を託してきた女生徒でさえ、SOS団に縁もない無名のキャラクターが用いられていたのだ。あれは『妃役』が遣わせた作り物の使者というところだろうが、それでは、「名有り」として此の世界に残ることを赦されていた朝倉涼子にも、何らかの役が振られているはず。それは、憶測ではあったが、古泉の仮定に予め取り入れられていたことだった。 天に名を馳す武将達、猛者が集う歴史小説ではない、元は子供向けを意図して描かれた童話なのだから、登場人物は、片手で数えて足りる程度だ。キャストオフは為されている。大部分は、自動的に絞られる。 小人は古泉、白雪姫が長門、王子を『彼』とするならば。 余りに明快な消去法だ。 「――あなたは、『鏡』役でしょう」 朝倉は微笑みを絶やさぬまま、刹那に儚い色を残してみせた。 「ご名答。やっぱり、古泉くんなら答えると思ってたわ」 無感動に手を叩こうとする朝倉の挙動を、古泉は細い手首を鷲掴みにすることで制止した。虚像とはぐれたようなその少女の心象は、見るに耐えなかった。朝倉涼子は目に見えて、そう、初めから投げやりだったのだ。 道を遮る気すら、本当はなかったのかもしれない。ただ古泉に総てを再確認させるためだけに。 「……あなたが『鏡』なら、以前、僕に忠告をしてみせたのは何故ですか」 妃役の手下という役回りの『鏡』の、それは『妃』役に対する裏切りに値するのではないのか。古泉に掴まれた手をじっと見つめ、朝倉は息を吐き出す。まるで人のような仕草で。 「私はね、本来ならこんな役目まではなかったの――まあ、言うなればアフターフォローよ。私は『お妃様』の役に立てなかった、無様な『鏡』役だもの」 PC内にあった、「白雪姫の鎮魂」というエンディングを描かれない、途切れたきりの物語。鏡は、確かに登場していた。お妃からの問い掛けにも、答える事の出来ない虚しい端役として。 役を与えられながらその役を全うできない存在の心は、忸怩たるものであったのかもしれない。……それはきっと、朝倉涼子の責任ではなく、世界が物語に従った故のことなのだが。 「もう全部が分かってるみたいね、古泉くん。私が『お妃様』から一体何を訊ねられたか……あなたには、想像がつく?」 「……ええ」 「ふふ、よく見ているのね。そう、だから私は『お妃様』を救ってあげたいの。 ……あなたに、後を任せてもいいかしら?」 「――お約束します」 「そう。良かった」 最期まで、少女の声は明瞭に、不揃いに、明るく優しかった。指の先から粒子になり、古泉が握っていた手首も徐々に侵食を受け、光を取りこぼしながら消滅してゆく。古泉は動揺しなかった。世界が壊れ始めていて、総ての人が消え失せていく のは分かっていたことで、恐らく時を待たずに古泉自身もそうなるのだろう。 朝倉涼子は――不完全な『鏡』であろうとも、『お妃』を本当に慕っていたのだろうと。終焉を眼の前に彼女は、そんな微笑み方をした。 「……あなたは、やはり、まるで人だ」 古泉がぽつりと吐いた呟きを、眠りに就く『鏡』役は聞いただろうか。 消え失せた朝倉の残像に眼を凝らし、それから眼を伏せ黙祷する。――腹は、据わっていた。 古泉は何もかもを見届ける覚悟を床敷きにして踏み越え、保健室の扉に手を掛けた。 ――扉そのものも、取っ手位置がチョコレートのように柔らかく液状になり、姿を保てずに融解していく。 露になった内装は、既に溶解したようになって原型を留めていない。古泉が脚を踏み入れた保健室は既に、先程までの保健室の様相を呈していなかった。いつかに体験した、ある種の情報制御空間のようだと古泉は思った。 そしてどろりとした飴が伸ばされたような地平の見えぬ空間、――仰向けに、寝かされた細く折れそうな身体を見つける。 だらりと四肢を垂らした少女。スカーフは整えられているのに、纏った制服のスカートはよれて皺になっていた。 けれども臨む、少女の上蓋を落とした表情は不思議と穏やかだ。 眠っているかのような彼女の掌に握られていたのは、まるく赤く瑞々しそうな、齧り痕の残る一個の林檎。 古泉は無言で、眠っているかのような少女の下まで歩み寄り、――膝を折った。震える左腕を伸ばし、少女の頬に手を触れさせる。まだ生きているように暖かいが……それも、じきに温度をなくしていくだろう。 「…………『間に合わなかった』。この物語の小人役も、どうやらそういう役回りらしいですね」 古泉は、視線を上向かせた。 死神のように立つ、以前の絞殺未遂事件に目撃をした黒フードの立ち姿が、そんな倒れ伏した長門を観察するように見下ろしている。背景が銀色と黄土色をマーブルにしたような歪みに彩られる中で、ふわりともせず静止する黒布は、不気味に浮かび上がって見えた。 この世界における『妃役』、この空間で長門を付け狙い、手に掛けた人物であることは瞭然だった。だが、古泉は罵声を浴びせかけることも糾弾をけしかけることもない。 眼鏡越しの少女の瞼は動かず、その結末を何処かしらで予感していた古泉の、噛み締めた唇から血が滲む。 ―――小人が呪に苦しむのを気に病んだ心優しい白雪姫は。 ―――そこに、毒が塗られているだろうことを承知の上で。 終わらせるために。誰もこれ以上傷つけないために、妃から林檎を受け取り、自ら、口にする。 『長門有希』はか弱く、脆く、優し過ぎた。 そしてそんな白雪姫の悲壮な死すら、計算づくで妃が書き上げたシナリオだというなら。視点を黒フードを羽織った『妃』役に向けて、古泉は遣り切れない総てをぶつけるように、問うた。 「どうして、ですか」 「…………」 「これは『あなた』だ。――あなたを、あなたが殺すのは、何故ですか…!!」 どうして、此の場に立ち会うのが、僕だったのですか。 古泉の臓を絞り切るような声に応じて黒布がはらりと落ち、蒸発するように端から消滅した。 露になったのは――古泉が縋るように抱いた少女とは違い、フレームのない素顔に、超然とした宇宙人端末としての匂いを損なっていない少女。白く薄い無表情の表層を保持し、古泉一樹の好意に、決して答えてはくれないだろう女性。 ――長門有希、だった。 --------------------------- 小人が駆けつけたとき、 ――総ては、終わったあとでした。 毒の林檎に齧りついて、白雪姫は死んでしまいました。 けれど例えば白雪姫が生き残ったらば、 火で炙られた鉄の靴を履いて、お妃様は死んでしまうことでしょう。 白雪姫を殺したのはお妃様。 ――お妃様を、殺すのは、だあれ? (→8)
https://w.atwiki.jp/kskani/pages/105.html
◆YsjGn8smIk 氏 氏が手がけた作品 話数 タイトル 登場人物 004 アサシンの誇り ラドック=ランザード 022 ドロロ死す!? であります ドロロ兵長、リナ=インバース、ゼロス 042 風がそよぐ場所に僕らは生まれて 涼宮ハルヒ、ヴィヴィオ、惣流・アスカ・ラングレー、モッチー、ゼルガディス 059 リリカルスバルたん第3話「ツバメモードとケロン人」 スバル・ナカジマ、ガルル中尉、ジ・オメガマン 077 師匠と、弟子 小泉太湖(小砂)、ラドック=ランザード 、高町なのは 090 胸の奥に溢れるのは涙よりも愛にしたい 水野灌太(砂ぼうず)、セイン、ナーガ 103 アスカ、襲来 惣流・アスカ・ラングレー、高町なのは、小泉太湖(小砂) 118 さらば愛しき中トトロ!! の巻 スバル・ナカジマ、長門有希 150 もしもふたり逢えたことに意味があるなら キン肉スグル、ゼロス、水野灌太(砂ぼうず)、碇シンジ 168 アサシンの終焉 ラドック=ランザード、朝倉涼子、ヴィヴィオ、リナ=インバース、ドロロ兵長 185 なるか脱出!? 神社の罠(前編)(後編) キョン、スバル・ナカジマ、ウォーズマン、リヒャルト・ギュオー、トトロ 200 トゲトゲハート 嫉妬のしるし キン肉スグル、ゼロス、タママ二等兵、ハム 209 でこぼこカルテット(前編)(後編) リナ=インバース、ヴィヴィオ、ドロロ兵長、朝倉涼子 215 闇夜の森の隠れ鬼 キョン、トトロ、ノーヴェ、リヒャルト・ギュオー 224 ケロロ大失敗!であります 冬月コウゾウ、高町なのは、スバル・ナカジマ、ケロロ軍曹、ジ・オメガマン、雨蜘蛛 登場させたキャラ 4回 スバル・ナカジマ 3回 ラドック=ランザード、ゼロス、ドロロ兵長、リナ=インバース、ヴィヴィオ、高町なのは 2回 惣流・アスカ・ラングレー、小泉太湖(小砂)、水野灌太(砂ぼうず)、キン肉スグル、朝倉涼子、キョン、 リヒャルト・ギュオー、トトロ、ジ・オメガマン 1回 涼宮ハルヒ、モッチー、ゼルガディス、ガルル中尉、セイン、ナーガ、長門有希、碇シンジ、ウォーズマン、 タママ二等兵、ハム、ノーヴェ、冬月コウゾウ、ケロロ軍曹、雨蜘蛛 作品に寄せられた感想 貴重な純マーダーを生み出してくれたお方。ほんとGJ!! -- 名無しさん (2008-09-10 19 03 03) モッチーイイイイイイ!! 濃い5人+デバイス勢による熱くも切ない戦いに魂を揺さぶられたぜ! -- yななし (2008-09-24 04 06 19) 貴重な、本気で貴重な純粋なマーダーを産み出し、モッチー達の熱いバトルを描いた…ストラーダ… -- 名無しさん (2008-10-31 22 42 43) 長門とスバルの戦いは色々としびれました…… -- 名無しさん (2009-02-16 18 20 41) 断チンの刑は恐ろしすぎます -- 名無しさん (2009-03-04 13 10 43) 長門とスバルのバトル、断チンの刑など面白いものを書く。戦闘もうまい。 -- 名無しさん (2009-04-11 00 09 40) 話の進め方が巧く、展開が熱い! -- 名無しさん (2010-05-06 02 12 23) ゼルVSモッチー、長門VSスバル、ドロロVSズーマのアサシン対決など、いいバトルを書くお方! -- 名無しさん (2010-11-05 22 52 14) 名前 コメント